あの人に出会って、眼鏡の沼に落ちた私。
一番最初に近視と診断されたとき、わたしは小学生だった。フレームがない眼鏡を買い与えられ、授業中のみそれを付けて過ごすという生活になった。長い間その眼鏡で過ごしていたのだが、高校生に上がるころから日常的に眼鏡をかけたくなった。本当はLess Than Humanの変わった眼鏡が欲しかったが、何の変哲もない黒縁の眼鏡を購入した。
大学生になっても黒縁眼鏡を使い続けていたのだけど、ちょっとした縁で眼鏡が好きだという女性と出会った。彼女はわたしの顔をじっと見て「そういう眼鏡も良いけど、もっとかわいい眼鏡あるよ」と言う。紹介されたお店へ行って、びっくりした。眼鏡って、こんなに自由でよかったのか。ぱきっとカラフルで、形も形容が難しいのや立体的なものがあった。やわらかいラベンダー色の金属でできたフレームなんて、初めて見た。あっという間に、眼鏡の沼に落ちてしまったのだ。
一番最初に購入したのは、ANNE ET VALENTINというブランドのフレームだった。心優しい店員さんたちに何本もフレームを選んでもらったけど、最終的に選んだのがこれだったのだ。茶色と明るい青の組み合わせが、チョコレートで有名なジャン・ポール・エヴァンに似ていてかわいい。それから数年間。MYKITAを二本、AKITTOを一本、と買い足した。あと一本買えば、平日は毎日違う眼鏡で出勤することが出来る。
なかなか贅沢かもしれませんね。ところで、こうして眼鏡を買うようになって、一つ良かったことがある。自分の顔が少しだけいとおしくなったのだ。一重まぶたで釣り目の自分の目もとを、悪いと思ったことはなかったが肯定的にとらえているわけでもなかった。しかし、そういう顔つきだと少し角度があるフレームが似合うのだ。それに、顔が薄いせいかどの眼鏡をかけても概ねハマる。(と私は思っている)
今年中にもう一本増やしたいと思っているが、本当に眼鏡はそんなに必要なのだろうか?たまに自分に問いかけるけど、答えはいつもイエスだ。日々化粧や服を変えるのと同じように、顔の一部だってコロコロ変えたい。簡単には買えないけれど、冒険してブランドものの眼鏡をかけてみると、そんな気分になる。私に眼鏡を教えてくれた、彼女は元気かな。
つづく