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自律的に働く、ということについてのいくつかの対話 松田光憲さん【事業推進部 】
松田さんが実践するオズビジョンにおけるワークスタイル
ーー松田さんご自身、オズビジョン以前にもさまざまな経歴をお持ちですが、いま年齢はお幾つですか?
42歳です。
ーーオズビジョンでの仕事を教えてください。
私のオズビジョンでのミッションは「ワクワクした組織づくり」です。ですのでそれに関することが仕事になります。
ーー事業推進部では具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
役割としては人事、総務、広報、法務、経理・財務、情報システムがあり、管理部門全般です。なぜそれをやっているかといえば、それが事業推進という仕事であり、そのことでワクワクする組織づくりをしています。
ーー早速、業務委託という働き方についてお聞きしたいのですが、松田さんがそのような働き方を選択した理由を教えてください。
実は2017年3月に正社員としてオズビジョンに入社しました。その年の9月にいったん退職というかたちを経て、業務委託契約に切り替えました。その理由は、労働者、使用者という労使の関係に疑問をもっていたからです。日本の企業風土として、「正社員だから会社が守る」という側面があります。そして残業は何時間まで、休日はこの日数とか決められていて、そういうことは働くということに関して本質的ではないと思っていました。好きなときに働きたいし、プライベートでやりたいことがあればそれを率先してやるべきタイミングというのもあるわけで、時間に対する拘束みたいなものを取り払うためには、いまの正社員という雇用体系ではどうしても限界があると思っていました。
ーーなるほど。
それでウチの会社がそういう働き方を推奨していて、自律型勤務制度というものを導入しているわけですが、そんな働き方でも成果を出せるということを実証しみんなに伝えるために、まずは自分が率先してその立場に身を置く必要があると思ったので、そのような働き方に切替えました。
ーー松田さん自らが実践することが必要だと思われたんですね。
そうです。メッセージとして伝わればいいと思いました。
ーーこれまで3度転職されてオズビジョンで4社目だそうですが、それはこれまでの3社での働き方とは異なるものでしたか?
これまでの3社では普通に正社員として働いていました。
ーー40代にして新しい働き方にチャレンジしたわけですね。
でも自分ではおっしゃるようには、大層なことではないと思っています。契約形態は変わりましたけど、働き方が変わったわけではありません。でも日本では思った以上に手間だな、というのはありますね。例えばしょうもないことなのですが、確定申告も自分でやるし面倒くさいなとか(笑)、これから結婚をする人にしてみたら、住宅ローンの審査が難しくなるのかなとか、社会システムによる不備みたいなものあるとは思います。
ーー先ほど正社員が必ずしも本質的な働き方ではないという言葉がありましたが、それは働くこと、生きること、両方においてそう思われているのですか?
そうですね、、、。個人的に思っているのは組織と個人の関係はもう少しフェアであるべきだと思っています。これまでは会社が社員を雇用している上下の関係性がありますが、これからはもっと対等、あるいはもっと個が強くなるイメージをもっています。それと働き手がどのような場所で働くかを自ら選ぶ時代になると思っています。
働くこと、生きることという点では、私は仕事って楽しいものだと思っており、お金のために働いているという感覚はありません。ですので働くことと生きることが直結していて、その二つは私の中で限りなく近いものです。
ーーオズビジョンの「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」という理念を体現されているともいえそうですね。そういったところも華麗な経歴をもつ松田さんがオズビジョンを選んだ理由でもあったのですか?
そうですね。ですが、きっかけはエージェントさんの紹介でした。ただオズビジョン代表の鈴木と最初に会った時から、伊那食品工業、ザッポスなど、好きな会社が一緒で、理想の組織イメージが一致していると思いました。
自律的に働く覚悟を持っているか?
ーー現在オズビジョンでは何名の方が業務委託契約という形で働いていますか?
20名です。でも私みたいな感じはいないですね。でも何をもって業務委託かというのは難しいんですよね。
ーー働き、成果を上げるという意味では正社員と業務委託にはそもそもの違いはありませんよね。
そうですね。自分自身、契約形態が変わったからといって正直違いはありません。ただ今後パフォーマンスを発揮する人というのは「フリーランス化」が進んできているのは感じます。能力が高い人は従来型の組織モデルの場合には、組織に属することが窮屈に感じると思うんです。組織が本当に大きなことをやりたいと思うのであれば、フリーランスと一緒にやっていくという形に組織自体が適応していかなければならないと思っています。ですので個人の働き方が変わるということよりも、組織がそういった方たちを受け入れられるように「進化」していかなければならないという認識でいます。
ーー社会にとって価値のある仕事をするため、よりよい人材と働くためにもそういった時代が訪れつつあるのかもしれませんね。
そうですね。昔であれば退職金制度を作り、福利厚生を充実させるという形での人材の囲い込みでしたが、今後はそうではないと思っています。フリーランスの人がパフォーマンスを発揮できる環境をどれだけ整えることができるのかが求められると思っています。
ーーまさにおっしゃる通りだと思います。組織自体がまず変わる必要がありますよね。そういった意味ではオズビジョンにはそのような考え方が組織の風土として根付いているということは実感されていますか?
企業文化としてオープンでフラットであること、性善説に基づき他者を信じるという土台は必要だと思っています。他の企業にはまだまだ少ない文化だと思いますがオズビジョンには根付いていますね。具体的な例でいうと、「Tonashiba(隣の芝生は青く見える)」という取り組みをしています。他社で正社員として働いている人が週一で弊社に来て、プロジェクトに参加してもらっているのですが、そういった方にも個人情報以外のウチの情報をフルオープンにしています。皆さん結構驚かれていますね。
ーーまだまだそのような働き方を組織として実現しているところは、日本では少ないですよね。ではなぜ変化することが難しいのでしょうか。
上司は仕事の成果を上げるために部下を管理するという、管理的な思考が根付いていることが大きいですよね。これまでのように決まった商品をたくさん売るということに関していえば、上から下までひとつのノウハウを一斉に展開していった方がいいわけで、オペレーションがどれだけ浸透しているか、まさに管理が効く時代だったと思うんです。でも今は好みが多様化していて、多品種少量生産の時代なわけです。そうなったときに一つの管理方法だけをやっていても、マネージメントは機能しません。そうなるとそれぞれが自律的にやってもらったほうがいいことは分かってはいるものの、従来型の管理的なところが残っているので変化できないのではないかなと思っています。
ーーでも、クオリティオブライフという考え方とも直結していると思うのですが、働く側としては個としての自分のライフスタイルも大切にしたい、働くことと生きることを同質にしたい、働くことが自己実現に結びつくべきだと思っていると思うんです。
確かに日本では自由で自己実現をする働く場所がない一方で、その人自身が自律的に働く覚悟をもっているのかというところもあると思うんです。フリーランスで自律的に働くということは、これまでの社会では当たり前にあった恩恵を捨てることになります。本当にそこまでの覚悟をもってやれる人がどれだけいるのか、決断できるのか。双方の問題だと思います。
ーー松田さんがそのような働き方を選んだ原点はありますか?
大層なものはありません(笑)。気づいたらこうなっていたという感じです。最初の会社には定年まで勤めた父のようにこの会社で働くという気持ちで新卒で入社しましたが、気づいたら3年で辞めていましたので、大きな志があったわけではありません。ですがその都度、自分のやりたいことや、在りたい姿に忠実にいたら現在のようになりました。
ーー僕の周りでも軽やかに転職される人が増えてきているのですが、独り身ならいざしらず結婚していたら奥さんに何か言われたりしないんですか(笑)?
嫁には、また転職するのとか言われますが、ウチの場合は言ってもしょうがないと思われていますね(笑)。いろんな問題がありますよね〜。そのために社会がもっと流動化するといいと思っていて。ある組織で成果をあげられなかったとしても、それはたまたま組織にその個人がマッチしなかっただけだと思うんです。だったらその人の能力が発揮できる場所に移動すれば十分に能力を発揮できると思っています。いまはまだ社会の流動性が低いのでチャレンジする機会は少ないかもしれませんが、世の中の流れ的にはそうなってきているので、そうすればより自己実現のために自由に働く人が増えてくると思っています。
ーーこれまでお話していただいたように、自律的に働くには向き不向きがあるとは思いますが、そういった意味では、松田さんはそのような働き方をおすすめしますか?
そうですね〜。一度しかない人生で、お金のためだけに働くというのは時間がもったいなくないですか? 自分がやりたいと心から信じることを仕事を通じて実現するという状況になったらいいと思っています。でも私も最初からこのような考え方をもっていたわけではなくて、自分なりに出来ることが増えてきてからやっとこのような考え方になったんですよね。最初は上司や先輩のもとで学ぶことは大切だと思っていて、それを経て自分がやりたいこととできることが結びついてきたという感覚があります。
ーー自己実現と同時に組織の発展を実現するためにはどうすればよいとお考えですか?
その点でいえば、元テニスプレーヤーの松岡修造さんが「ありのままとわがままは違う」といいことを言っています。わがままは周囲のことを考えずに自分の好きなことだけをやること、ありのままはそうではなくて、自分のやりたいことで周囲にも貢献することだと。ですのでそれを仕事に置き換えると、ありのままで働くということが組織において求められていると思っています。
オズビジョンでは組織のビジョンと個人のビジョンがどれだけ擦り合っているかということを大切にしていて、面接でもオズビジョンが目指すところと大切にしているビジョンを話した上で、それに対してオズビジョンで成したいことは?と問いかけます。そして、いいか悪いか、劣っているか優れているかではなく、それがどれだけフィットしているかということをすごく大事にしています。
ーーそれが近くないと働いてからお互いが不幸になりますよね。
そうです。そのフィットがないと、自己を殺して働かなければいけないという状況を作る要因となると思うので、採用面接ではその部分をものすごく大切にしています。人それぞれ得意なことややりたいことは違っていても良いのですが、ただ、そのベクトルの向きは組織が目指す自己実現と同じ方向を向いていることは大事だと思っています。
私がオズビジョンにもっている感覚は「楽しいけど楽ではない」ということです。それと「まじめだけど面白い」、「しんどいけどうれしい」、ある種そのような矛盾する感覚を持った働き方をする会社がオズビジョンだと思っています。私の業務委託という雇用形態にしても、時間が自由で楽しそうと思われるかもしれませが、私の感覚では自己鍛錬の場、修行に近いですよね。
ーー自己実現することって楽しいことだけではないですよね。例えば、よい写真を撮ろうとしたら、逆に下手な写真を撮る自分に向き合わなければいけないかもしれませんし、辛さや苦しさと直面するかもしれない。でも学び、経験を重ねていくことで、自信がついてきて、いずれは自分が思うような写真を撮ることが出来るようになるかもしれない。自分が安心して仕事に向き合うために、準備をすることが大切なのかなと思っています。
そう思います。さまざまなことにチャレンジでき、任せてもらえる環境ですが、そこには同じだけの責任もあります。それを支えるものは何を実現したいかというベタにいえば「情熱」です。
ーー松田さんにとってオズビジョンにおける組織づくりとは?
組織づくりは文化づくりだと思っています。文化というものは伝わりにくいものではあるのですが、オズビジョンの価値とはまさにこの組織文化にあります。「Be a big fan」というメッセージとともに伝えていければと思っています。
WRITING
フリーランスライター / エディター加藤 孝司1965年東京生まれ。デザイン、ライフスタイル、アートなどを横断的に探求、執筆。2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。 http://form-design.jugem.jp/