誕生月、とにかくテンションをあげるためのベロア。
とにかく、テンションの上がる買い物がしたい。根っからの貧乏性なので「間に合わせ」の買い物が好きではない。どうせお金を使って買うものなら「これじゃないと嫌」という理由がほしい。そのモノに魂からひれ伏したい。そんなようなことを思っているので、ワードローブになかなか服が増えない。
12月を前にして、わたしはじりじりとしていた。自分の誕生日を、毎年すばらしいレストランでお祝いしてもらうのだけど、そこに着ていく服が見つからないのだ。去年はmameのワンピースを、一昨年はYOKO CHANのワンピースを着た。二着とも素晴らしいワンピースだけど、首が詰まったデザインで、アクセサリーをつける前提のデザインではないのだった。何本か持っている、特別な日にしかつけないネックレスが映えるものが欲しい。
そういえば、この間結婚した友達が「来年式をやる」と言っていたような気がする。そういったフォーマルな場にも着ていけて、合わせるアイテムでカジュアルにもなる。そんなワンピースが欲しい。捜索は難航した。ああ、こんな時CARVENがあれば。もう日本では買えなくなってしまったブランドに思いを馳せても仕方ないのだけど、今のわたしには「このブランドなら間違いない」というものが存在しない。
セレクトショップもZARAも伊勢丹も覗いて見るのだけど、魂が惹かれるようなワンピースが見つからない。いっそのこと、ギョーム・アンリがやっていた頃のCARVENを古着で探そうかとも思ったのだけど、お祝いの場に着ていくものは新品がいい。ノイローゼのように毎日そんなことを考えていた頃、Instagramで一枚の広告が目に留まった。
COSというブランドの、Vネックのベロアワンピース。H&Mの高級ラインで、まだ日本にはECサイトがない。東京には銀座と表参道に店舗があるのみだ。週末にこの服を探しに行こう。思えば、ベロアのワンピースなんて持っていない。ドキドキしながら店に向かったのだけど、無かった。店員さんに訊いても「いつ入ってくるのかもわからないし、そもそも入ってこないかもしれない」と残念そうな顔で言われてしまった。しかし、ここで諦めるわたしじゃない。
次の週に再度チャレンジする。店の奥のマネキンが、ベロアのワンピースを着ていた。奥の棚にはすべてのサイズが並んでいる。Instagramで見た臙脂色ではなかったけど、深いネイビー。わたしは紺色が好きなので、むしろこちらのほうが良い。秋口から悩んでいたのが嘘のように、ビビッ、と来た。これなら、例えば白いタートルネックを合わせて、カーディガンなんか着ても可愛いかもしれない。まさか伊勢丹でも、お気に入りのセレクトショップでもなく、ファストファッションのブランド(が展開している高級ライン)に自分の魂の行く先を見つけるとは。
改めて、お買い物は出会いだし、視野を狭めてはいけない。そう思った冬の日だった。
つづく