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社員もユーザーもすべてがひとつのファンの集団である 風間尋実さんインタビュー 【広報、法務、人事等】
リクルートで制作のディレクター、組織人事のコンサルタントなどの仕事を経て、ファーストリテイリングに転職と、大手企業を経てオズビジョンに入社した経歴をもつ。
そんな風間さんからは初めて話を聞いたときから、「オズビジョンという会社は、なぜそうあるのか、なぜそうするのかと本質を問う面倒くさい会社である」という話を何度も聞いた。だが、そう語る表情はつねににこやかで、どこか嬉しそうで、そこにオズビジョンという会社の本質があると思った。
オズビジョンの番頭ともいえる風間さんに、その歴史とこれまでの業務と展望について聞いた。
私がオズビジョンに入社したころの話
ーーオズビジョンへの入社は何年になりますか?
2011年3月7日です。東日本大震災の4日前でした。ですので最初にやった仕事が3.11での全社員の避難誘導でした。
ーーそうでしたか。当時オフィスは神保町にありましたよね。
はい。弊社は比較的時間に自由でしたから、震災が起きたとき、お昼に出ているもの、外回りをしているもの、内勤をしているものなどさまざまで、誰がどこにいるのか確認するのが大変でした。
オズビジョンの設立は2006年でしたから、当時はまだ若いベンチャーでした。総務、人事、法務、労務など管理系の部署の責任者として入社したのですが、私が入社したころのオズビジョンがどのような状態だったかというと、就業規則の労働基準監督署長への未届け出もそうですが、まだいくつか会社としての体をなしていないような時代でした。
それで就業規則の改定など会社として成立させるための仕事から着手しました。新入社員の研修などもまだありませんでしたので、その年の4月から早速始めました。そのほか会社の成長に合わせてマーケティングの仕事やPRの仕事をしたり、その時々で重要な業務に携わってきました。
ーー現在のオズビジョンが注力していることを教えてください。
まずはオズビジョンの軸である「ハピタス」を拡大させていくことがひとつ。ハピタスに関して最大のテーマは、ポイントで人の暮らしを豊かにすることです。これまでポイントというと「稼ぐもの」というイメージだったと思うのですが、私どもが考えるのはそれを越えて、生活を豊かにするものにすることです。
ーー具体的にはそのためにどのようなことをされているのでしょうか。
まず、現金は使うと勿体ないものと思われる方が多いのですが、ポイントは現金と同等の価値を持つものでありながら、逆に使わないと勿体ないものと真逆だということです。
ーーあまり考えたことがありませんでしたが、確かにそうですね。
それと、皆さんなんのためにポイントを使っているのかを調べたところ、「ハレの日ケの日」でいうとハレの日、特別な日にみなさんポイントを使うんですね。ポイントで日常生活に彩どりを加える、日常の価値を増す感覚なんですね。
ーーハピタスでそのことを意識的に打ち出すということでしょうか。
そうです。ハピタスは現在可動人数として270万人くらいの方にご利用いただいていて、20年後には1000万人を目指していて、その考えが人々に浸透したら、少し世界が変わるんじゃないかと思うんです。キャッシュレス元年と言わるようになって久しいですが、そのことを考えてもポイントには追い風が吹いています。ポイントで人を幸せにできる、そのことに意識的になればポイントサービス自体のあり方も変わるんじゃないかと思っています。
もう一つは弊社の「ポレット」のような新規事業をたくさん生み出すことを目指しています。弊社ではそれを「100人100社100通り」というビジョンのもと進めていて、大小の事業を立ち上げることでオズビジョングループ自体を大きくしていきたいと思っています。
そのため「人が幸せになることに貢献する」という理念を掲げ、そのこと自体を働く喜びとしていくということを根幹としながら、大小さまざまな取組みができる会社にするという構想を持っています。
人を幸せにする集団をつくる
ーー風間さんはオズビジョン入社以前はどのようなお仕事をされていたのですか?
リクルートという会社で制作のディレクター、組織人事のコンサルタントの仕事を12年間していました。その後、コンサルタントとして担当していたファーストリテイリングに転職しました。
ーー長年大企業で勤務された経歴をもつ風間さんがなぜオズビジョンだったのでしょうか?
私が転職を考えてエージェントに相談したときに、面白そうな会社があると推薦されたのがオズビジョンでした。
今でこそオズビジョンの理念や価値基準、事業内容に興味を惹かれて入社してくる方は多いのですが、私が入った2011年当時はハピタスも会員数が50万人そこそこの会社でした。何を言いたいかというと、当時オズビジョンは世の中には全然知られていない、魅力のとぼしい一中小企業に過ぎませんでした。
ーーではなぜそのような会社を選ばれたのでしょうか?
一言で言って興味関心です。会社をほぼゼロから立ち上げる、成長させる経験をしてみたいと思ったのが入社の一番大きな理由でした。ポイントサイトの事業には正直あまり興味がありませんでしたが、リクルート、ファーストリテイリングなどを経験をしてきて、次に転職をするなら小さい会社がいいと思っていました。それで、当時26歳だったオズビジョン代表の鈴木に会って、話しをしているうちに、この男面白いと思いました。鈴木が面白い会社を作りたいと語るその部分に興味を持ったんです。
ーー鈴木さんの人としての魅力に惚れたと?
そうですね。本人は嫌がりますが、弊社の最大の特徴のひとつは鈴木の人柄があると思います。たとえ話にはなりますが、フェラーリに乗っていてもおかしくないくらいの会社としての価値を築きながら、本人はまったくそのようなことには興味がありません。極めてピュアな青年です。ですが経営感覚は一流で鋭いものを持っていますし、それとすごく本質主義者的なところがあります。
ーーその本質主義的なところはオズビジョンの理念「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」にもあらわれていますよね。
おっしゃる通りです。既存の働くという価値観では、仕事で自己実現する必要ってない気もするんです。特に日本では仕事において自分が充実しているかは二の次で、しっかりお金を稼いで家庭と生活を充実させるために頑張っている人がほとんどです。ですが、鈴木は仕事とはアーティストやアスリートと同じように、それを通じて人を感動させることができる、幸せにすることができると本気で信じている、そしてそういった集団を作りたいと本気で思っている人間なんですね。こういう経営者って世の中をみても、結構珍しいんじゃないかと私は思っています。
ーーたしかにそのような経営者の話はあまり聞いたことはありません。これまで風間さんが経験されてきたなかでもそれは珍しいと?
そうですね。この規模で仲間と一緒にやろうと本気で考え実践しているリーダーは珍しいと思います。最近、民主主義的といいますか、漫画「ワンピース」のルフィー的な経営者というのは30〜40代の経営者には現れてきているのですが、さまざまな部分での能力をもちながらこれだけの規模の経営をし、組織を成長させながらというのは珍しいと思います。
ーー自己実現をする集団でありながら、同時に経営を伸ばしていくというところですね。風間さんからみて鈴木さんはどんな経営者ですか?
先程の「ワンピース」のルフィー的といいましょうか。いろんな夢をもった存在をひとつの船に乗せて「ワンピース」を探しにいくリーダーですよね。でも旗を振って「いくぞ〜」みたいな感じとも違います。穏やかで、楽しげなリーダーシップといいましょうか。
ーー風間さんご自身、オズビジョンに入ることで新しい世界を見てみたいという思いもあったのでしょうか?
オズビジョンを含めて次の会社を探しているときのテーマがありました。それは、「サザエさんシンドローム」という言葉が一時期流行っていたのはご存知ですか?日曜日の夕方、サザエさんのエンディングソングが終わると意気消沈するサラリーマンが多いというものです。そうではなくて日曜日の夜に「いい休日だった、また明日から頑張ろう!」と思える会社ってないだろうかということでした。そんなことを考えていて、その話しを面接の時に鈴木にしたら、「ぜひそういう会社をつくりましょう」と意気投合したんです。私自身そうすれば定年を迎えた時に、ひとつのことをやり遂げたという感覚が持てるんじゃないかという、未来のビジョンを描くことができました。それが私がオズビジョンを選んだ理由です。
チームとしてのオズビジョンを支えているものとは?
ーーオズビジョンのオフィスを拝見して、会社であることはもちろんですが、まさにひとつのチームとしての一体感ともいえる存在感を感じました。会社という組織で自己実現をするためにはその一体感が大切だと思うのですが、チームワークに関してはどのようにお考えですか?
オズビジョンは「ベストワーク」「ベストチーム」「ベストセルフ」の3つのクレド、各クレドの3つの基準を掲げていますので、もちろんチームワークは重視しています。
ーーそのうえで先程の組織としての理念があると思うのですが、オズビジョンにとっての企業理念とは組織にとってどのような存在ですか?
2009年~2010年にかけてに初めて企業理念を設定したのですが、それ以前は「ICTで社会に貢献する」といいった自己実現というよりは組織としての成長を価値基準にしていました。当時は社員たちが寝袋を持ち込んで徹夜で仕事をするというような、ある意味ブラックともいえる会社でした。そんななかでも社員が共通して思っていたのは「幸せになりたい」という思いでした。そこで鈴木は、ならば人の幸せというものを会社の軸にしようと思った。それでどうすれば人は幸せになれるのだろうかと考えたときに、最大の幸せは自己実現をすることだと。そこで鈴木が引き合いに出したのが、自己実現を頂点とした「マズローの欲求の5段階説」でした。そこからオズビジョンの「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」という理念を考え、その理念を実現するために先程のクレドを策定しました。
ーークレドは会社という組織における行動指針ですが、急に会社がウチの理念を実現するために今日からこういうふうに行動してくださいといっても、すぐに社員に浸透するものなのですか?
それがそうはうまくいかなかったんです。企業理念もそうですが、クレドは組織としての行動基準というかなりの根幹部分でもあります。だからそれを浸透させるためにも、それを実現できているかどうかで社員の給料に差をつけました。そうしたら社員の大反発をくらってしまって、それが理由で離職者が出てしまいました。
これは余談ではありますが、2018年に日本語版が出版された「ティール組織」という本があります。日本で唯一弊社が取り上げられたのですが、それをみたロシアの企業が視察に訪れました。彼らを迎えるにあたり、自分たちの理念、クレドや関連する様々な過去の取り組みについて振り返りを行いました。その時自分たちが発見したのが、企業理念、クレドや様々な組織づくりのための試みは、価値観の「踏み絵」としても機能していたということでした。当時は社員を結束させるための価値行動基準だったのですが、それは社風に合う合わないの踏み絵でもあった。私には合わないと考える人が辞めて、合うと考える人の割合が高まってくる。辞めていかれた方は痛みをもって辞めていかれたので、われわれとしても反省もしなければいけないのですが、結果的に今の強い組織をつくるきっかけだったと思っています。
ーー現在社員は何名ですか?
正社員は50名で、業務委託も含めると70名ほどの会社です。それも一般的な正社員、委託社員と違って、弊社では両者がとても近いという特徴があります。ですから社員は何名ですかと聞かれたときには、所帯としては70名ですと正社員と委託社員の方をあわせた総数でお伝えすることが多いです。
ーー平均年齢は?
だいぶ歳を取りましたねえ(笑)。私が入った当時は27とかそのくらいだったのですが、現在では35くらいで、ITのベンチャーの平均年齢としてはかなり高いほうだと思います。
それには理由があって、多くのITベンチャーの場合、若い人を入れて新陳代謝を図っていくということが多いと思うのですが、弊社の場合は優秀な新卒を4〜5名採用して育てていくということが多く、劇的な新陳代謝を起こすメカニズムにはなっていません。一般的にITのベンチャーでは、たとえばエンジニアであればその特性としてキャリアを積んで転職を重ね、お給料を上げるというメカニズムが働くのですが、ウチで働いているエンジニアの場合必ずしもそうではありません。
ーーそういう意味ではオズビジョンで自己実現ができているという証ですよね。
そうですね。多分転職をすればもっとお給料が上がるエンジニアもいると思うのですが、オズビジョンで働くということに関してお給料以外での別の力学が働いているんでしょうね。
リブランディングで本質的な価値観を示す
ーー今回リブランディングをされましたが、会社として成長している段階でなぜ変化だったのでしょうか?
一番大きな理由は採用でした。業績は伸びているといっても、ハピタスという270万人程のユーザーを持つメディアを運営している一ITベンチャー企業で、まだまだ世の中の多くの人にとっては無名の会社にすぎません。そんな状況で優秀な人材に来て下さいといっても難しい。会社に足を運んでいただいたり、内実を知っていただくと「いい会社だ」と言ってもらえますが、それをきちんと伝えていく方法常に模索してきました。今回リブランディングを支援していただいたエイトブランディングデザインさんに、どのような会社であるのかを定義しなおさなければいけないとご指摘をいただきました。それで一年かけて、ミッションの再定義、ビジネスモデルの優位性の定義など経営学の講義のようなことをしたり、会社の幹部や立候補した社員たちが集まって膨大な時間をかけて議論をして、これだ!といって出てきたコンセプトが「Be a big fan」という言葉でした。
ーーその言葉に込めたメッセージを教えてください。
社員は単なる労働力ではなく、ユーザーは単なる売り上げの源泉ではない。すべてがひとつのファンの集団であるということを再定義しました。その輪をどんどん大きくしていく。リブランディングの過程で我々はそういうことをやりたい集団なんだという考えに至りました。そのことを企業ロゴやHPのリニューアル、SNSなど、いろんな角度から戦略的に打ち出していくことが目的です。
ーー確かにリブランディングは採用など対外的にもそうですが、社員の皆さんへオズビジョンはこの方向を目指すんだ、だから一緒に実現していきましょうというメッセージにもなっていますよね。
まさにその通りです。私も社内ブログを書いているのですが、半分は採用希望者に、そして半分は社内の人間にも読んでもらいたいと思って書いています。私たちが普段考えていることや、皆さんこういう態度でやりましょうということを文章で伝え、社内に浸透させていくことも私の重要な役割です。
ーー先ほど採用とありましたが、どのような人と一緒に働きたいですか?
理念やクレドなどを掲げてその意味では社員を束縛する部分があり、合う人と合わない人がいる会社だと思うんです。弊社の体質としてあるのは、本質的なことを繰り返し問いかける会社であるということ。その部分は仕事をして成果を上げることが会社にとってすべてなのでは、と思っている方には少し異常に映るかもしれません(笑)。例えば、遅刻をしないということに関しても、なぜ遅刻はいけないのか、遅刻ってそもそも咎める必要があるのかという本質的なところからの議論になる面倒くさい会社です(笑)。クレドを決めるにしてもトップが決めればいいものを、志望者を集い、これまた膨大な時間をかけて議論した上で決定しました。
ーーみんなで決めたことだから守ろうという民主主義的思考が浸透しているんですね。
よく言えばそうです(笑)。だからそういうことを良しとする、あるいは楽しもうという人にとっては、めちゃくちゃ楽しい会社だと思うんです。
ーー本質的なことを問う組織だからこそ、面白みがあるのがオズビジョンという集団なんだと思います。
ありがとうございます。それと弊社では完全自立型勤務も導入しています。これは単に好きに働いていいよというものではなく、そこには自分はどうするのか、何を選択するのかという自立性がものすごく問われます。一般的な大きな会社にお勤めの場合、そのような本質的な問いを自分にしなくても毎日仕事が出来るのですが、完全自立型勤務では自分がどうするのかを自分で決めなくてはなりません。これはものすごく面倒くさいことであるとも言えるかもしれません。
ーーフリーランスであれば、仕事にしても休みにしても、自分はどうするかをつねに問いかけながら仕事をしますからね。
まさにその通りです。オズビションはチームを大切にしますが、もしかしたら自分はどう生きるのか、自分はこの会社にどう関わるのかフリーランスの集団としてのチームとしての性格をどこか求めているのかもしれません。
ーー生きる上でも同じことですが、仕事も自分はどういう人間でいたいのか、人生の目的を実現するにはどうすればいいのか、そのために組織はどうあるべきなのかなど、つねにそこにある現状に問い掛けをし続ける必要があります。風間さんご自身はオズビションをどのような会社にしていきたいと思っていますか?
直近としては先程の採用を中心としたブランドビルディング、もうひとつは全オズビショングループの中でのマネージャーの育成というテーマがあります。ですが、多分来年の今頃は「ホールディング化」ということが最重要テーマとしてでてくると思っています。私としてはオズビションが成長する過程で直面するさまざまなことを担っていきたいと思っています。
ーー会社としてはいかがですか?
ハピタスをさらにブレイクさせていくために、ポイントの世界を変えていきたいと思っています。現在、マイクロ金融資産をチャージしてどこでも使えるようにするサービスである「ポレット」がありますが、ホールディング化に向けて、100人100社100通りというビジョンを掲げていますが、まだ一社しか実現できていません。社としてはそこへの動きが加速していくと思います。ホールディング、事業創出に関しては鈴木とハピタス事業部の杉本が推進していますのでていますので、彼らをバックアップできるようにしたいと思っています。私としては引き続き広報や法務といった領域に固執することなくその時々に必要とされることをしっかりやっていきたいと思っています。
WRITING
フリーランスライター / エディター加藤 孝司1965年東京生まれ。デザイン、ライフスタイル、アートなどを横断的に探求、執筆。2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。 http://form-design.jugem.jp/