身の丈に合わない買い物への、本気の懺悔。
憧れの白いカバン
ずっと白い鞄が欲しかった。2014年のGINZAで見かけたルイ・ヴィトンのボストンが理想だったが、40万円を超えていた。そんな高価なものには手が出ない。トートバッグでもリュックサックでもない、白のミニボストン。クリーンでミニマルな雰囲気への憧れもあり、ずっと私の「欲しいものリスト」の最上位であり続けた。
表参道のGYREにあるメゾン・マルジェラで、私は白い鞄を買った。ミニボストンではなく、普通のショルダーバッグだったが、すこし頑張ればクラッチバッグにもなりそうな形。がま口を逆さまにしたようなモチーフが付いていて、裏返せばマルジェラの「四つ糸」も付いている。当時のアルバイト(最低賃金)で目一杯シフトを詰めた状態を三ヶ月続けて、ようやく手が届く鞄だった。
これを買うべきだ。直感でそう思った。清水の舞台から飛び降りるような気持ちは、後にも先にもこの鞄を買うときがピークだったと思う。
人生で初めて、高価な失敗をする
だけど、思い切って買った鞄は、たぶん一年ぐらいで使わなくなってしまった。あんなに高かったのに!だから「レビュー懺悔」初めての、本気の懺悔だ。つまり、失敗だったのだ。
一番にして最大の欠点はベルトにあった。私の普段の荷物が重たいせいもあるだろうが、鞄の簡素なベルトとその穴では重さを支えきれない。常に一番短いベルト穴を使いたいし、肩紐の長さは固定しておきたい。が、すぐに外れる。ベルト穴が伸びてしまい、長さを固定するのが困難になってしまった。
罪悪感が薄れてきて
こうなると大変である。もう持ちたくないな、という気持ちが一気に湧き上がる。斜め掛けはもう無理だし、肩にかけておいてもいつベルトが外れてしまうか気が気じゃない。結局、あんなに頑張って買った鞄なのにクローゼットの奥に封印してしまった。こんなに豪快に失敗することってあるんだ。
しばらくは、クローゼットを開けるたびに罪悪感があった。高価だったのだ。手放すのも勇気が必要で、もうずっと悩みのタネだった。購入から数年が経ち、ようやく罪悪感が薄れてきて、そろそろ手放すべきだと思い始めた。そして出会ったのが、telfarのショッピングバッグだ。
あの頃、telfarを知っていたら
telfarは2005年にできたブランドということだったが、私は2020年に知った。マルジェラの鞄を買った頃も存在していたのだ。あの頃これを知っていたら!と思った。価格は手頃だし、サイズも色も豊富だ。
エコレザーで出来ているショルダーバッグは、マルジェラのものに比べると簡素で小さくて、軽い。雨の日にも気にせず使えるから、長い梅雨の真っただ中にいる今年の私にはぴったりだ。
懺悔は続く
そうして購入したtelfarの鞄を見るたび、ふっとマルジェラの鞄が頭をよぎる。うまく使えなくてごめんね、と後悔が押し寄せる。きっと財布とスマートフォンぐらいしか入れてはいけなかったのだ。
でも、もう手放すと決めた。ベルト穴が伸びているし、何度か使ったからくすんでいる。手放す前にはきちんときれいにしてあげよう。それが、うまく使えなかった私の、せめてもの罪滅ぼしだ。