リモートワークの教科書 第7回 「ちゃんと評価できるの?」
第1回 さぼる人が出てくるんじゃないでしょうか?
第2回 ずっと一人ぼっちは寂しくなっちゃうんじゃない?
第3回 顔をあわせなきゃ仕事にならない?
第4回 おうちのリビングだと仕事に集中できないんじゃない?
第5回 電話がかかってきちゃうでしょ?
第6回 子どもが家にいて仕事どころじゃない
第7回 ちゃんと評価できるの?
コロナ前後でいちばん変わったこと
6年前から試行錯誤し、新型コロナウィルス感染拡大以降はほぼ100%実施している私たちのリモートワーク。うまくいったこともまだまだなこともありますが、これから直面する重要な課題の一つが今回で触れさせていただくリモートワーク下での「評価」です。
Beforeコロナ、After/Withコロナ。働く環境という意味でもっとも違うのは「上司や部下が、同じ時間に同じ空間に滞在し、頻繁に接し、働きぶりはもちろん表情や意欲、言葉や態度、あらゆるものに頻繁に接触することができた」のがBeforeコロナであり、「そうでない」のがAfter/Withコロナ、という点ではないでしょうか。
「そうでない」状態でいかに「評価」をしていくのか。私たちが現在もこれからも考え続けなければならない重要なテーマです。
成果重視は当然だけど…
リモートワークにトライし始めたころから私たちが評価をするにあたって重視していたのは「何が成果か」ということでした。リモート導入の根本精神が「いつどこでどう働けば成果が最大化するかは本人が最もよく知っていると信じること」にあったため、成果を評価の主軸にすえるのは必然であったとも言えます。
一方で経営理念を中心に「会社や個人の在り方そのもの」「大切にしたい行動基準」などにも高い価値があると信じている私たちは、成果を重視しながらも、評価の際にはそれ以外のものも尊重する傾向にあると感じています。
成果と同じぐらい大事なもの
それは会社自体が売上や利益などの業績成果はもちろんですが、一方でNPSという顧客ロイヤリティ指標を業績成果と同等の最重要指標としていることとも関連しているといえるでしょう。実際、金や時間などの投資についても、売上や利益の創出には直接的な関係が少ない分野にも少なからずおこなってきました。
たとえば「大切にしたい行動基準」を私たちは「クレド」と称して言葉にしているのですが、2018~2019年の改訂時には、経営チームと改訂プロジェクト参加希望者合計10数名が、延べ100時間以上にわたって妥協無き議論を実施しました。
そのほかにも新しい人が入社してきたチームは、必ずといっていいほどこだわりぬいたチームビルディングを行っていますし、しばしば泊りの合宿に出かけたり(さすがにここ数カ月は控えていますが)、外部講師をお招きし業績伸長とは直接関係のない講演会の実施などもしています。
業績成果だけではない様々な側面が会社の評価に影響を及ぼす。濃淡の差はあれど、私たち以外の会社や団体でもきっとあることと思います。
BeforeだろうがAfterだろうが大事なこと
さて評価の話でした。
「そうでない」状態でいかに評価をしていくのか。大切なことは何か。
結論を申し上げると「リモート下では、Beforeコロナとは考え方を変え、限られた様々な接点を貴重な機会として捉えなおし、評価者と被評価者というより、相互に本質的な理解をいかに深めていく日常を積みかさねられるか否か」がカギになってくるのではないかと感じています。
前述のようにAfter/Withコロナにおいて、Beforeコロナを懐かしみ「見えないわからない」と嘆いていても状況はよくなりません。直接接触する機会はほぼ必然的に少なくなります。表情や意欲や心情、プロセスや努力や成長、最終的な数値成果以外のそれらの「評価の際に大いに参考にしたいもの」がこれまでと違って見え辛くなるかもしれません。
一回の接点がいかに貴重か。一回の接点をいかに活かすか。Beforeコロナ時代にやすやすと手に入れることができた表情や意欲や心情。プロセスや努力や成長。評価の時期までに擦り合わせておきたいそれら。毎週1回30分のzoomでの1on1でいかに把握できるか。
・「リモートが続いているが体調に変化はないか?何か心にひっかかっていることはないか?」
・「ちょっと疲れた表情に見えるが仕事面だけでなく何かフォローできることはあるか?」
・「この1か月でこのような点で成長が感じられるが、自分自身での手ごたえはどうか。今後考えていることはあるか?」
・「この状況下だからAに集中するのはやめて、BとCに集中していこう。BはこうCはこうするとよいと思うがどうだろう」
・「Dは中期的には必ずキャリアにプラスになるから目標に入れてトライしてみようか」
相手の表情や語調に集中し、意見に潜んでいる背景や状況や心情にまで心を配る。現状の仕事の進捗だけでなく将来にまで思いを馳せて、成果だけでなく意欲や姿勢まで把握する。限られた時間で相手を尊重してさまざまな支援やアドバイスをする。これらの日々の蓄積に基づいて「評価」をすること。
これって。
そもそも大事なことなんじゃないかって。BeforeだろうがWithだろうがAfterだろうが人が人を真剣に評価しようとする時には。
モニター越しの1on1がもたらすもの
「ほぼリモートワーク」になってわかったことがそれです。
毎週1回30分のzoomでの1on1。モニター越しにかわす人と人との会話。限られているからこそ、条件があるからこそ、より真剣に向き合う。接近する。本質的な理解に至る。少なくともその努力をお互いにする。お互いにすることによって信頼が生まれる。その信頼の蓄積の先に評価がある。きっとそれは擦り合うのではないでしょうか。
とはいうものの。人が人を評価するという難しい行為です。試行錯誤は必ずまだまだ続きます。しかし同じ志をもった仲間として集った会社。相互が本質的に理解し合い信頼し合う。これはいずれにせよ「Good」なことに繋がると信じています。「ほぼリモートワーク」期間の半期の評価が実際に行われるのは2020年の10月。その時にはまた別の課題が見えてくるのかもしれません。
リモートワークの教科書、これからも包み隠さずまいります。
WRITING
広報室 室長風間 尋実オズビジョングループにて広報、法務を中心に、人事、採用、育成など幅広く担当しています。設立後の黎明期から現在に至る紆余曲折試行錯誤を直接経験してきました。